「義経じゃないほう」とは?思わず二度見したこのタイトルが、私と『義経じゃないほうの源平合戦』の出会いでした。
源平合戦といえば、華やかな義経や頼朝が主役になりがちですが、本作の主人公はその陰に隠れがちな“平凡な弟”範頼。歴史の片隅に追いやられていた彼の視点から、源平合戦という壮大な物語がユーモラスかつリアルに描かれています。
難しそうに思える時代背景も、現代語で軽快に綴られていて、歴史小説初心者でもスッと入っていける1冊。
「歴史の表と裏、両方を楽しみたい」そんな方にぴったりの作品です。
『義経じゃないほうの源平合戦』の基本情報とあらすじ
作品名 | 義経じゃないほうの源平合戦 |
著者名 | 白蔵盈太 |
出版社/発売年 | 文芸社文庫/2022年 |
ジャンル・雰囲気 | 歴史小説 × ユーモア × 人間ドラマ |
鎌倉なんか、来るんじゃなかった。蒲御厨で静かに暮らしていた範頼は、命の危機を感じて頼朝のもとへ来るも、会って早々、兄の怒りに触れ言葉も出ない。ちくしょう、怖すぎるだろ、この兄さま。打倒平家に燃え勇猛果敢に切り込んでいく弟の義経を横目に、兄への報告を怠らず、兵糧を気にする自分の、なんと情けないことか。頼朝と義経、二人の天才に挟まれた平凡な男、源範頼の生きる道。
引用:Amazon
『義経じゃないほうの源平合戦』を読んだきっかけ
次に読む本を決めないまま読了してしまい、Kindle Unlimitedの対象作品をなんとなく探していたときのこと。ふと目に入ったタイトルをタップしてみると、主人公は「源範頼」。
なんて読むのかも分からない名前に一瞬戸惑いつつも、あらすじを読んでみると、あれ、ちょっとまって、これって鎌倉殿の13人の迫田君じゃない…!?ということで、鎌倉殿の13人が大好きな私は、吸い込まれるように読むこととなりました(笑)。
『義経じゃないほうの源平合戦』がくれた気持ちと気づき
ネタバレにならない内容となっていますが、まっさらな状態で楽しみたいという方はご注意ください。
何を考えているのか読めない兄・頼朝。戦の天才でありながら、どこか天真爛漫で子どものような弟・義経。そんな2人に挟まれ、歴史の表舞台ではあまり語られない存在――それが「源範頼」です。彼の視点で描かれる源平合戦は、決して派手ではないけれど、だからこそ“戦のリアル”を感じさせてくれました。
兵糧の確保や、御家人たちのもめごとの仲裁といった一見地味な場面にも、「勝つために必要なこと」がぎゅっと詰まっていて、戦の奥深さを改めて実感。画面越しに見る歴史とはまったく違う、生々しい現実がありました。
「鎌倉時代」と聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、本作は現代語でテンポよく描かれており、ところどころクスッと笑える場面も。気負わず軽やかに読み進められます。
ただ、源平合戦と義経の結末を知っている私にとって、物語が終盤に向かうにつれ、胸がキューっと締めつけられるような切なさが。静かに、でも確かに、心に余韻を残す1冊でした。
『義経じゃないほうの源平合戦』はこんな人におすす
- 歴史小説は好きだけど、堅苦しいのはちょっと…という方
- 義経や頼朝の話は知ってるけど、その周辺人物に興味がある方
- 「脇役」の生き方に共感できる人
- 大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が好き、気になっている人
歴史の教科書に載っていない、もう1つの源平合戦。肩肘張らずに読めるから、普段あまり歴史物を読まない人にもおすすめです。
まとめ
戦の華やかな場面よりも、裏で奔走する凡人の努力や葛藤にスポットを当てた『義経じゃないほうの源平合戦』は、戦を描きながらも、そこに息づく人間くささや現場のリアルが心に残る1冊でした。
頼朝と義経という二人の天才に挟まれながらも、自分の役割を全うしようとする範頼の姿に、静かな勇気と共感をもらえるはずです。
派手さはなくても、心の奥にじわりと沁みてくる1冊。歴史の“名もなき視点”を追いかけてみたくなったあなたに、ぜひ手に取ってほしい作品です。